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平成養生訓
人生にエッセンス、医療ジャーナリストの“丸山寛之さん”が綴る、平成養生訓を紹介いたします。
Vol.192010年4月23日
後ろ歩きのおすすめ
「しわがよるほくろができる腰まがる頭がぼけるひげ白くなる」
江戸後期の禅僧・仙厓(1750~1837)の『老人六歌仙画賛』冒頭の一首として広く知られている狂歌です。が、作者は仙厓自身ではなくて、俳人・ 横井也有(1702~83)といわれています。同時代にそれを紹介した本が2冊あります。江戸南町奉行・根岸鎮衛(1737~1815)の『耳嚢』と、九州平戸藩主・松浦静山(1760~1841)の『甲子夜話』です。
仙厓和尚は『耳嚢』か『甲子夜話』のどちらか(あるいは両方)によって、この鋭くて飄逸な自己観察の狂歌を知り、『老人六歌仙画賛』を描いたのでしょう。
もしかしたら『甲子夜話』のほうだったかもしれません。
生涯、九州黒田藩に仕えた和尚は、福岡、博多はもとより、旅を好み、行く先々の人びとと親しく交わったと伝えられているからです。
前おきが長くなりました。今回のテーマは「後ろ歩き」です。
昔は老人といえば「腰まがる」ものだったようですが、今はあまり極端に腰の曲がった人は見かけません。
それでも年をとってくると、どうしても体が前に曲がり気味になりがちで、それが老年の体型の特徴といえます。
この前に曲がりがちな姿勢を矯正するのに効果的なのが、後ろ歩き運動です。
人間はいつも前にばかり歩いているので、そのときにはお尻や脚の筋肉を主に使って、おなかの筋肉はほとんど使いません。
歩くときに限らず、現代人の生活ではあまり腹筋が使われないところへもってきて、中年になって腹が出てくると、腹筋の力が落ち、しぜん前かがみの姿勢になってきます。
しかし、後ろ歩きをするときには、腹筋をよく使い、背すじや腰が伸びます。体が前に曲がっていたのでは、とても後ろ歩きはしづらいからです。
1日1回、たとえば、朝起きたら4歩、5歩、前にゆっくり歩いて、後ろ向きのままでそれだけ下がる。
再び前へ歩き、後ろへ下がる。腕を振り、1歩、1歩、踏みしめるようにゆっくりと、前へ、後ろへ歩く。
これを10分間もやれば、1時間の散歩をしたぐらいの運動になるし、長く続けるうちに自然と姿勢もよくなります。
さらにもう一つ、後ろ歩きの効用は、目を使わないため感覚系の神経が集中することです。
前に歩くときと違って、五感をとぎすますようにして、注意深く歩く|これがいいのです。
ずいぶん以前の話ですが、バレリーナの森下洋子さんにお話をうかがったとき、バレエでは後ろ歩きの訓練をされますか、とたずねたら、それが非常に重要なことなのですという返事でした。
後ろ歩きをすることで、感覚が鋭敏になり、姿勢も美しくなる。
慣れると前に歩くのと同じくらいのスピードで後ろ歩きができるようになりますと、おっしゃいました。
自慢じゃないけど、私も、その点だけはバレリーナ並みです。
毎日夕方、家の近くの荒川の堤防上に作られた自転車と歩行者専用道路を、1時間ばかり歩いているのですが、その3分の1は後ろ歩きをしています。
広い平坦な直線路なので、そんなことができるのですが、後ろ向きでスイスイ歩いていると、すれ違う人や自転車は上手によけてくれます。一度もぶつかったりしたことはありません。
もう20年以上も続けている習慣で、いまや「趣味は昼寝、特技は後ろ歩き」と豪語?しているくらいです。
そのおかげだろうと思うのですが、腰痛やひざ痛に悩まされたことはありません。
後ろ歩きは、最初はどうしても「かかと歩き」になって、10mも歩くと太ももの後ろ側が痛くなりますが、慣れると、足の指で歩いて、200mでも300mでもへっちゃらになります。
後ろ歩き、おすすめします。最初は4歩、5歩、前へ歩き、後ろへその歩数だけ下がるやり方で練習してみてください。














